ドラえもんがいつも負けてしまう、苦手な遊びとは何でしょう? 

 

 

こんにちは、「副代表」のキアゲハです。

 

書評でも上げてみようか、と、思います。

 

 

『坊っちゃん』の時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人

関川夏央・谷口ジロー作

アクションコミックス(双葉社)から単行本が出ています。

ただ、1987年初出なので、現在は文庫本の方がお求めやすいでしょう。

(できれば、単行本で、谷口ジローの緻密な線を堪能して欲しいのですが。)

 

「坊ちゃんの時代」の主人公は夏目漱石、時代は明治時代です。 

 

物語は泥酔して乱闘騒ぎを起こした漱石が留置場で目を覚ますシーンから始まります(!)

酒乱の気があった漱石は、酒場で1人ビールを飲んでいたのですが、周りに座った青年たちの口論激論に触発(?)されテーブルをひっくり返す等大暴れ、あえなく青年たちとともに留置場送りになってしまったのです。

目覚めた漱石は事情を説明し、青年たちの身元を保証して共に釈放されます。

これを機に後の文豪と青年たち(書生の森田草平、社会運動家の荒畑寒村、会津出身の侠客堀紫郎、明治大学生の太田仲三郎)、の奇妙な縁が始まります。

 

 

明治とはすなわち、「日本」が自我に目覚めた時代とも言えましょう。

 

鎖国が終わり、西洋の文物・知識・精神が日本人に文字通り衝撃を与えた時代。

「文明開化」といえば聞こえは良いが、その当時の人が「西洋」をただただありがたく頂いたわけではありませんでした。

不平等条約を背景とした西洋列強の帝国主義への警戒。

一方で、後進国である日本は西洋を手本とするしかない。

作中の言葉を借りれば「西洋に対する偏頗な愛情」を抱いていたのです。

(そして「この精神は形を変え現代日本まで続いている」)

 

漱石は倫敦留学したことはご存知の人は多いでしょう。

しかしながら、この留学後半、漱石は酷いノイローゼに悩まされます。

留学中の漱石を尋ねた土井晩翠は「驚くべき御様子、猛烈の神経衰弱」と述べているほどです。

 

帰国後、第一高等学校と東京帝国大学大学の講師職についたものの漱石の精神不安続きます。

漱石の第一作目「吾輩は猫である」はある意味この精神不安に対する「セラピー」の意味合いも合ったほどです。

漱石が青年たちに出会ったのはこんな時節でした。

そして、この青年たちを中心とした様々な事件の中で、漱石は「坊ちゃん」を構想していくのです。

 

 

明治とはすなわち多忙な時代でした。

 

森鴎外、小泉八雲、安重根、東条英機、大杉栄、樋口一葉、石川啄木、平塚らいてう

様々な人物が直接的・間接的に漱石に関わり、そして一つの時代を織り成していきます。

 

時代は、日本は、進むべき道を模索していました。

異質なる他者(=西洋)に対して、自我に目覚めた青年(=日本)は、有為たる存在としての自立を目指し、その他者の力を必死で同化しようともがいていくのでした。